見たもの
大阪坂にまつわる怪談短編集。
あまり怖さはなく専らミステリー畑の作者がこんなものも書けるんだと物珍しく見るといい感じの本。
大阪の土地は全くわからないのでその辺りも損をした気がする。わかったらもう少し楽しかったかなぁという程度ではあるけど。
一番のお気に入りは猫が出てくる話。
化け猫として怪談の常連だけありわりと書きやすかったのかなと思われる。
逆に絵の話は面白かったけどあぁ、ミステリーにいっちゃったのねとがっかりな感じ。面白かったけども。
前二巻を前振りに人間ドラマを書いた物として面白かった。
ただ、これはもうラノベである必要性がなく作中の異能も大分影を潜めてほとんど意味のないものに。
ホントにもう何でラノベ?と言っていい内容。
作中さまざまな人間を分類して書かれているがまさにという感じで思わず膝を叩きたくなる感じ。
哲学的にはわからなくもないけどイマイチと言ったところ。
作中の哲学は自分のやれそうなもので信じたいものを信じればいいというのは目から鱗というかホントに無理はする必要ないなと実感。
個人的にはそれがわかっただけでも十分かな。
江戸時代の生活を骨から分析ということだけど話が大分とっ散らかって少々纏まりに欠ける。
それでも勉強にはなったけどこれだけじゃまだまだ弱い。是非他の物も読みたいところ。
昭和30年代の話を小学生の女の子の視点で書かれているので全体的にほんわかとして優しい話に。
お姉ちゃんの特殊な力に純粋に憧れたり秘密も流されて話しちゃったりとずいぶんとリアルに書かれている。
一応、ミステリーみたいな感じではあるけど透視能力ということもありその辺りは本当にあっさりとしている。
お姉ちゃんの優しさが胸に染みる。
全く前情報もなく読んだので当初、話の繋がりが全く見えないからこれは実は短編集?と思いつつ読むことに。
全く繋がりが見えなかった物がパズルみたいにはまっていく様は圧巻の一言。
タイトルもまさにこれ以外にあり得ない!というはまりよう。
人を殺してしまうのはともかく、保身に走る様も人間だし母性を発揮するのも実に人間らしい。
最後の一家離散という結末は物悲しく正直、そこまでやるのかと若干引いてしまった感がある。実に素晴らしい読書体験だった。
サイコホラー6編、全てがしっかりと話が立っていて飽きることがなかった。
どれも実によくできていて引き込まれた上思わずあぁ……と目を覆いたくなるできに。
特に後ろ二作はこの話の続きが実に気になるものになっている。
まさに夏にぴったりの一冊と言った感じ。